ミディアムレアの程よい焼き加減の神戸牛。


和風のステーキソースは店長手作り。隠し味でわさびが入ってる。


若い頃、有名イタリアンのシェフをしていたと言うみけネコ店長の手料理はときどきお店でもまかないとして食べさせてもらっていたけど、これがびっくりするほどおいしいんだ。


小さくステーキを切り分けて一口口に入れると、


やっぱりおいしい♪


独り暮らしの貧乏女子大生が到底手に出る食材じゃないし?


こうなったらとことん味わってやる。と半ばヤケクソな私。


「朝都ちゃんワインのお代わりどうぞ」


「あ、すみません」


空になったグラスにさりげなくワインを注いでくれるみけネコお父様。さすがはバーの店長をやってるだけある。


そのタイミングもさりげなさもばっちりだ。


その様子を向かい側でお茶のグラスに口を付けて、じっと見つめてくる黒猫。


お肉とワインはおいしいけど……


い、居心地悪い~~(泣)


「三人で食事するのはじめてだよね。倭人はどう?ちゃんと勉強してる?」


みけネコ店長が親の顔になって聞いてくる。


「あ、はい!飲み込みも早いし、理解力にも長けてます」


「それなら良かったけど、実を言うとちょっと心配だったんだよね。


倭人は家庭教師クラッシャーだから」


家庭教師クラッシャー??


「おい、余計なこと言うなよ」と黒猫が不機嫌そうにみけネコお父様を睨む。


そんな不機嫌におかまいなく、みけネコお父様は続けた。


「実は朝都ちゃんは家庭教師三人目。前の二人はすぐに辞めちゃったんだ。


気難しい倭人と長く続いてるってことは何か波長が合うのかな」


「気難しい言うな」


黒猫はまたも目を吊り上げて、ぷいと顔を逸らす。






波長が―――……?





うーん、そこんとこ良く分かんないけど、


でも


私の前に前任が二人も居たなんて初耳だ。