ジュッ…


カウンターの向こう側でみけネコお父様が分厚い神戸牛を焼いてるいい音がして、お肉の焼けるふわりといい香りが香ってきた。


「いいのかよ、親父と三人で食事って。あんた気ぃ遣わない?」


テーブルにフォークとナイフを並べながら黒猫はキッチンの方を気にした。


私はグラスを並べてお手伝い。


「だって断る理由なんてないじゃない。お父様が気を利かせて誘ってくださったのよ」


私たちはひそひそ。


さっきの甘い雰囲気から一転、変な風に流れてしまってぎくしゃくするかと思いきや、お父様の乱入(?)と言う思わぬ事態に


思った以上に普通に接することができた。


「朝都ちゃんワイン飲んでいかない?


朝都ちゃんが好きな日本酒今置いて無くって、ごめんね」


またも不意打ちにキッチンから声を掛けられて、私はびくっ!


「あ、はい!喜んでっっ」


それこそバーでバイトしてたときは普通に接することができてたのに、いつになく緊張するのは、


雇い主から“彼氏のお父様”って立場に変わったからだろうか。


もちろん…黒猫倭人とお付き合いしてることは言ってないんだけどね。


「てかあんたも言ってないでしょうね」


「言うか。言ったら、あんたクビになるだろ」


クビ!?


『家庭教師の分際で、大事な一人息子に手を出しやがって!この売女がっ!!』


みけネコ店長がこんな風に怒ったとこは見たことないけど、そう言われるに違いない!


キャー!ごめんなさいぃ



「そんなのイヤ!」





「俺だって困る。



朝都が家庭教師辞めちゃったら、しょっちゅう会えないじゃん。



俺、寂しくて死んじゃうよ」