「泊まっていこ……かな」


黒猫を抱きしめてそう囁いたときだった。






「ただいま~倭人ぉ♪朝都ちゃん、来てるの~~??♪」





遠くで聞いた覚えのある声がして


「「は!?」」


私たちは慌てて離れると、思わず顔を見合わせた。


「ちょっと黒猫!お父様じゃない!?あんた帰らないって言ったじゃん」


「泊まりで行くって言ってたんだよ!」


私たちは急にあたふた。ドタバタ。


「と、とりあえず椅子!椅子に座って、勉強!」


「そ、そだな」


ガタガタっ


バサバサっ


慌てて椅子に座り、参考書を開いてるときだった。


コンコン


部屋のノック音がして、


「倭人、ただいま~って聞こえなかったの?」


とミケネコお父様が顔を現した。


何故ミケネコかって??それは私だけのあだ名で、黒い髪の一部がおっしゃれ~に茶色に染まってるから。


元々顔は黒猫と似てるから、つまり猫顔で…髪の色の割合とかでミケネコって呼んでる(心の中で)


再三言うけどミケネコはそのほとんどが♀です。


でも髪がミケネコ。


「親父、今日泊まりじゃなかったのかよ」


黒猫がそっけなく聞いて振り返ると、


「急に向こうの都合が悪くなっちゃってね~。違う日に変えたんだよ、あ、朝都ちゃん久しぶり~♪♪元気ぃ?」


相変わらず……軽いなぁ。ノリが女子高生みたいだ。


それでも一度は同じ職場で働いた仲だし?働いてるときは随分お世話になったし?


こう見えて(?)怒ると怖い人だし??






何せ“彼氏のお父様”だしね!






私は慌てて頭を下げた。


「あ、はい!ご無沙汰してます。店長もお変わりないようで」


「朝都ちゃんに会えて嬉しいよ。そうだ、夕飯一緒にどう??


神戸牛。神戸行ってないけど雰囲気だけ。駅前のデパートで買ってきたんだ~」


ミケネコお父様はにこにこ。


「勝手なこと言うなよ。この人だって予定あるだろうし」


と黒猫が咎めるように言ったけれど、


「あ、はい!是非っ!」


断れない私……↓↓↓




ああ…変な展開になってしまった。