―――
「男なんて所詮煩悩に打ち勝てない俗物だ。
そうだと思わない?せんせー」
英語の教科書をぺらぺらめくりながら、黒猫が突然言い出したとき、
すぐ隣で文法を説明しようとしていた私のシャープペンシルの芯がボキっと折れた。
な…何言い出すのよ!!この子は!!
しかも真顔!
あんた“煩悩”“俗物”って意味知ってる??
思わず辞書を勧めたくなったけれど、やめた。
―――私のペットは可愛い黒いネコなのに、突然“男”になる。
予想もつかないタイミングで。
「どうしたの?何かあった?」
年上のおねーさま風情を滲ませて、カウンセラーのように聞いてみる。
何て言ったって、今はお勉強中なんだし。
勉強内容に“保健体育”は含まれていない。
だけど黒猫は相変わらず私の話をスルーして、
「人間の欲望て果てしないよね。
一つ手に入れるとまた次を望みたくなるんだ」
「そ、そうね~…欲を言い出したらキリがないわよねぇ」
曖昧に笑ってごまかしていると、
すっ
出し抜けに黒猫が立ち上がった。
思わずビクっと肩を揺らして黒猫を見上げると、
「頭冷やす」と言ってマイペースにすたすた部屋を出ていってしまう。
へ……お~い、黒猫ぉ。今はお勉強中だぞぉ。
一体どこへ行ったのか…



