―――それは文化祭の次の日のことだった。



「最短で一週間。最長で二ヶ月」


私はカウンター席で、グラスに入った赤ワインに口をつけて、前を向いたまま言った。


「私も今まで最短で三日。最長で二週間てところだよ」


涼子も同じように前を向いたまま吐息をつく。


何の期間かって??


それは付き合った相手と初チューまでの期間です。


言うまでもなく最長記録更新は黒猫なんだけどネ。





「付き合ってないときはやっぱフライングに入るの??それとも事故?」




涼子が難しい顔で腕を組んで、私はようやく隣の席の涼子に目を移した。


「昨日キスしちゃった。溝口さんと」


いつもは浩一も入れての三人メンバーなのに、いつもは安っぽい居酒屋なのに。


今日はおっしゃれーなイタリアンのお店。


涼子から誘われたわけだけど、なるほどその意味が分かった。


私は飲んでいたワインを危うく吹き出しそうになった。


溝口さん!?何て手が早いの!


私が黒猫とのはじめてのキスをして浮かれまくってるときに、二人にそんなことが!?


ってか浮かれてるとか自分で言っちゃう私…相当イタいし。


「いや、うまく行けばいいかな~とは思ったけど……ちょっと急過ぎない?」


慌ててワインを飲み込むと、日本酒とは違った渋みが喉を通っていき、品の良い香りが鼻を抜けた。


「何でよ~キスぐらいいいじゃない。ってか朝都、発言が高校生みたいよ?ってかイマドキの高校生だってもっとススんでるでしょ」


「私は黒猫とお付き合いしてもう二ヶ月近く経つってのに、ようやくキ……


ダメ…それ以上は私の口から言えないわ」


両手で顔を覆って頭をふりふり。


「あんたのバイオハザード変態ウィルスは日に日に増殖してってるわね。


もはや人格すらも乗っ取られてるじゃん」


そーなんだよね…


「んで?溝口さんとは付き合うの?」


「んー、まだ分かんない」


と涼子はのんびり。