触れるだけの優しいキス。



唇が離れると、黒猫は私と額を合わせたままちょっと頬にピンク色を浮かべて


「ソースの味がした」


と一言。


「あんたもね」


初キスはレモンの味とか言うけど??


「レモンの味じゃなくて残念だったね」


と、照れ隠しにからかうように言うと、


「あれ、嘘じゃね?」


と黒猫が小さく笑った。


だけど笑っている途中、変な風に表情を固まらせた黒猫。




「「…………」」




黒猫……今の発言で初チューじゃないことを暴露したね。口が滑ったって感じだ。


「ふぅん」


私は面白くなさそうに唇を尖らせていると、黒猫が赤くなった顔を覆うように手をやり、僅かに俯いた。


でも離れていこうとはしない。


黒猫の最初になりたかったのになぁ。





危ないレッスンじゃないけど、


全部、私色に染めて忘れられなくしたいのに―――





私ってこんな考えの持ち主だっけ。


今まで誰にも抱いたことのない感情。


独占欲―――…って言うのだろうか。


危険過ぎるだろ、私。バイオハザードの危険レベルがぐぃーと上がっていくのが頭の中で容易に想像できて私は慌てて頭を振った。


そんな挙動不審の私の手を、黒猫がそっと握ると、






「朝都が最初じゃないかもしれないけど、俺は朝都で最後にしたい。



同じように朝都の最後も、俺であってほしい」






そんな風に真剣に言われて、私は黒猫と同じように顔を赤くしながらゆっくり頷いた。


それはこの先、黒猫が共に人生を歩んでいくパートナーに私を望んでくれてるってこと。


黒猫の頬を両手で包むと、今度は私の方から顔を近づけた。


黒猫の最初は私じゃなかったけれど、これから黒猫といっぱいキスすればいいもん。






黒猫と二度目のキスは―――




やっぱりソースの味がした。





ずっとずっと、忘れなさそうな味だ。