めぼしい出し物を一通り見終えて、黒猫が連れて行ってくれたのは
2-Aと標識が下がった教室だった。
「ここ、俺の教室」
「―――…え?」
「出しもんは外だから、ここは使ってないの。普段通り」
黒猫は私の手を引いて教室の扉を開けた。
「え、ちょっと…入っていいの?」
「大丈夫、大丈夫」
と笑う黒猫に言われるまま私はついていった。
机と椅子のセットが乱雑に並んでいて、懐かしい木の香りが鼻の下をくぐった。
そしておひさまの香りも―――
それはいつも黒猫が漂わせている無邪気な香りと同じものだった。
黒猫は窓際の列の机の一つに手を置くと、
「ここ、俺の席」
「んで、朝都はそっち」
ちょっと強引に黒猫の隣の席へ座らされる。
黒猫もすぐに自分の席へ落ち着いた。
何をするのかと思いきや、
「財津 倭人」
自分の名前を呼んで、
「はい」手を上げた。
何だそれ。出席ごっこか?
何だそれ。無邪気だし、てか可愛いし。
「次、真田 朝都」
フルネームで名前を呼ばれて、あたしは目をぱちぱち。
「真田~…はいないか?」
黒猫が頬杖をついて私の方を見てくる。
「は、はい!います」
私は慌てて手を上げて席を立ち上がった。



