どうしたものかと軽くため息をつくと、タイミングを図ったようにスマホが震えた。

開くとそれは案の定エマからで、「もう飛行機が出るから何かあれば赤髪をかきあげた男を頼れ」というもの。


席に座ってコーヒーを頼みながら目の前にいる人をちらりと見る。燃えるような短めの前髪を後ろへと流すようにかきあげた男。
彼はエマを知っているようだし、もしかしなくてもこの人のこと……?



「えぇと、急に連れてきてしまってすみませんでした。私はさくらと言います」

「あー……オレこそ勘違いして悪かった。俺はカイルってんだ」

「カイルさん」



忘れないようにと復唱すると、彼は「カイルでいい」と無邪気に笑った。
人懐っこい笑顔だなと頬を緩めていたら、カイルはちらりと自分のスマホを見てぎょっとした後、ひたいに手を当てて深くため息をつく。



「……うちのエマが面倒事に巻き込んだみたいですまん」

「面倒事に巻き込まれた覚えはないけど……とりあえずカイルはエマの友達ってことでいいの、かな?」



そう聞いてみるとカイルは首を捻る。



「友達……?いや、違うな……腐れ縁ってのが近い」

「腐れ縁、かぁ」

「あぁ」



一人で私は納得していると、あーだとかうーだとか唸りながら彼は頭を抱え始める。
そうして少ししてから意を決したようにコーヒーを一口飲んだ。



「今さっき、面倒ごとに巻き込んだ、って俺言ったよな」

「うん、言ったね」

「……お前がどこから何を知ってるのか、俺はわからねえから最初から説明するけど」



そう前置きして、カイルは話し始める。