「あと見てないのはー、……あそこの花店かな」



ぱちぱちと頬を叩いて意識をしっかり戻したところで、早速私はお店に寄る。

そこは白、青、桃、黄、紫……色とりどりの花がいっぱいに咲いていて。その中心に咲いているのは、満開の真っ赤な花だった。



「見たことない、けど、すごく綺麗………」

「……エマ?!」



思わず写真を撮ろうとしたその瞬間、焦ったような声が聞こえたと同時に肩を掴まれる。
そして目の前に映ったのは、花と同じ、明るいけれど深い赤。



「お、前何してんだよ!飛行機は、」

「……?!っ、あの!」



動揺しているらしい赤髪の人は、私のことを誰かと間違えているらしい。声を張り上げてなんとか彼の勢いを止める。
……というか、もしかして。



「エマって、エルモアのことですか?」

「は?お前何言って、……エマじゃ、ない……?」

「はい、私エマじゃないです。……とりあえずあそこの喫茶店に入りませんか?」



確認したくて問うた言葉に答えは貰えなかったけれど、目を見開いて徐々に青ざめていく彼とこのまま話すわけには行かないし。
私が指さした方にある喫茶店へと向かうと、赤髪の人は目線をうろうろさせながらついてくる。