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出店はどれも日本では見たことのないような物ばかりが売られていて、買わなくても充分楽しめるものだった。
お店の人たちもカメラを向けるとノリノリで写ってくれたし、豊かな国なんだなと心から思った。
まだ見ていない品々を見て回って、あと少し写真を撮ったらホテルに一度戻ろう。
そう考えて後ろを振り返った時だった。
透き通るような白い肌。
日の光を反射している、ブロンドの柔らかそうで毛先のはねた髪の毛。
髪と同じ色の長いまつげに縁どられ、吸い込まれそうなほど深い緑色をした少し眠そうな瞳。
呼吸が、止まった気がした。
それは今まで見てきたどの人よりも美しくて、鮮やかで。
綺麗。
ふと溢れた言葉をまっさきに拾ったのは、目の前の綺麗な人だった。
「……っ!人違いだった、すまない」
弾かれたように彼は人混みの中へ消えて、残るのは呆然として動けない私だけ。
ようやっと私の意識が戻ったのは、小さい女の子に「大丈夫?」と声をかけられてからだ。
大丈夫だよ、ありがとう。と返して立てていた予定通りに動こうとするけれど、頭の片隅にどうしてもさっきの人の顔が離れない。……すごく衝撃的だったし。
というか今日一日で何回大丈夫かと心配されてるんだろう、私。