その週の土曜日は出勤しなかった。
家事を済ませた後は一日、のんびりと映画を観たりしてリフレッシュした。

夜が訪れて、簡単に和風パスタを作り夕食も済ませる。
食後、本日二本目であるヒューマンドラマの邦画をぼうっと観ていると、いつの間にか眠ってしまったようだった。
目が覚めると、午後九時を過ぎていた。

寝起きのぼうっとした頭でふと思う。
そういえば先週のこの時間、初めて屋上に上がったんだっけ。

柳さんは屋上によくいると言っていた。
今日もいるかな?

一度気になると確かめたくなってしまった。
寝癖がついていないか髪をチェックしてから、家を出る。

重厚な鉄の扉を押すと、やっぱり簡単に開いて、彼は先週と同じ場所で柵に手をかけたまま、こちらを振り返ったところだった。

「こんばんは。やっぱり、来ると思った」

「えっ、そう?」

「うん。何となく」

私も「こんばんは」とあいさつを返すと、柳さんは嬉しそうに微笑んだ。
今日も黒色のTシャツにベージュのチノパンというラフな格好だ。

「見て。今日は雲がなくて星が綺麗に見えるよ」

「あ、本当だね」

柳さんに歩み寄り、私も隣に立つ。
確かに、空の隅々までが見渡せる。
星は光り輝いているし、空気も澄んでいるように思える。

「私もね、今日もいるかなと思って気になって来ちゃった」

ぽつりと話すと、柳さんは笑って口を開く。

「そう。どこかで気持ちが通じ合ったのかもね。ちょうど話がしたいと思ってたんだ」

「そうなの?」

悪戯っぽい瞳を向けられて、小さく心臓が跳ねた。

「毎朝会ってるって言っても、話もできないから」