着いた先は普段は寄らないような大きな総合病院。勝手が解らずに右往左往しながら、受け付けをたらい回しにされた上に伊織さんの病室に着いたのは、たぶん30分以上経ってから。
急ぐために早足でなるべく早く歩いたけど、内科病棟はあまりに遠かった。
(503……和泉 伊織……ここだ)
伊織さんは大部屋ではなく、個室に入ってた。ここにはたぶん葛西さんもいるはず。
(こわい……だけど、ちゃんと顔を見なきゃ)
もしも深刻な病気だったら……と想像しただけで、足がすくんで動けなくなりそうだ。
今まで私の家族で大切な人はおばあちゃんだけだったし、おばあちゃんは風邪ひとつ引かない頑健なひとだ。だから、身近でこんな事態は初めて経験することで。不安で怖くてたまらない。
(いつまでもぐずぐずしていられない……)
ふう、と息を吐いて震える膝を叱りつける。ためらいながら、コンコン、とドアをノックした。
「はい」
返ってきたのは――予想外に女性の声で。ドクッと心臓が嫌な音を立てる。
「す、すみません……私は碧と申します。伊織さんが倒れたと聞きまして」
名字まで知らせたら相手が結婚の事実を知ってしまうかも……そんな配慮で名前だけを名乗ったのだけど。
しばらくして、ガチャとドアが開かれる。
そして――現れた女性は。
本社ビルで伊織さんの隣にいた、あのキャリアウーマンさんだった。



