あまりにショックな言葉に、頭が真っ白になって呆然とした。
『碧ちゃん、聞こえてる? 伊織が倒れたんだよ!』
「……は……はい……聞こえてます……」
苛立ちが混じる葛西さんの声に、ようやくそれだけ答えた。その後、立て板に水で葛西さんは病院の場所を教えてくれる。必要な情報をくれた後、彼は慌ただしく通話を切った。
(伊織さんが……倒れた)
血を吐いて倒れた、という事実は衝撃的で。身体中から力が抜けてへなへなとその場に座り込む。ゴトッとスマホが畳の上に落ちた。
「まあ、これが仮にも結婚した女の姿かね、みっともない! 妻なら、夫の危機に一番に駆けつけるもんだろ!」
おばあちゃんの厳しい声が後ろから飛んできた。ハッと振り返ると、おばあちゃんは真面目な顔をしてカバンを手にしてた。
「ほら、主婦なのにそんなにうろたえてどうするんだい!? 夫を助ける大切な仕事があるんだろう。めそめそ泣いてる暇はないよ!さっさと行っといで」
押し付けられたカバンを抱えたまま、おばあちゃんが呼んだタクシーに乗り込む。
(お願い……どうか伊織さんが悪くありませんように)
タクシーの中では両手を胸の前で組んで、ひたすら伊織さんの無事を祈った。



