(今日はお腹に優しいプリンにしようかな)
ダイエットレシピを眺めながら、体に優しいものを作ろうと思案してた。
もうすぐ5時。今日はまっすぐ帰ろうと雑誌を置いた瞬間、ポケットに入れたスマホがブルブルと震える。
(あ、そういえばマナーモードにしてたんだっけ)
スマホの番号を知ってるのは決まった人しかいない。今は仕事中だから、後でかけ直そうと放置する。
だけど、電話は留守電に繋がらずに鳴りっぱなし。いつかは切れると思ってたのに、呼び出しが続くとだんだんと不安が募っていく。
(まさか……伊織さんになにかあった? ううん、まさか。
彼がわざわざ私に連絡してくるはずないし。何かあったとしても、私に連絡するなと葛西さんに命令するはず)
伊織さんにとって私は妻であっても書類上のこと。所詮は赤の他人で、気遣ったり気遣われたりなんてしたくないはず。今までの冷たい態度からすればそうとしか言えない。
だけど……
(だけど私は……伊織さんが心配だよ。迷惑と思われてると分かっていても)
着信は一度切れたけど、仕事が終わる5時になった瞬間再び鳴り出した。おばあちゃんに断って和室に駆け込むと、スマホを取り出して画面を見る。
――“葛西さん”と名前が出て、嫌な予感で心臓が音を立てた。
葛西さんはよほどのことがない限り、仕事中に連絡することはない。それなのにこれだけしつこく連絡してくるなんて。
震える指で画面をタッチすると、通話が始まった瞬間葛西さんのものとは思えない焦った声が耳に飛び込んできた。
『碧ちゃん! 伊織が血を吐いて倒れたんだ。急いで病院に来てくれ!!』



