契約結婚の終わらせかた









朝ごはんは黙々と食べてお互い会話は無かったけど、伊織さんはパンプディングをぜんふ食べてくれたんだ。3ヶ月前の偏食ぶりからすると、ものすごい進歩だよね?


おはる屋のレジでパラパラとダイエット本を捲りながら、伊織さんのことを考える。


伊織さんは今朝6時に家を出ていった。どうやら早い時はハイヤーやタクシーを使うみたいだけど……。


(いくらなんでも早すぎる。朝6時に出ていって、帰りは午前2時とかだなんて。絶対体に良くないよね)


そういえば、今朝彼はやたらとお腹を押さえてた気がする。どうしたか訊いても、「おまえには関係ない」とにべもない。

ミクがお腹にダイビングしたせいじゃないかって心配しても、「余計なことは考えなくていい」って斬り捨てられたし。せめてと腹痛の薬を伊織さんのビジネスバッグに忍ばせておいたけど。頑固な彼のことだから、薬なんて意地でも飲まないだろうな。


ちょっとだけ近づいたと思っても、すぐに突き放されて距離が出来る。私と伊織さんは最近はそんなのばかりだ。


(もっと会話をしたくても、伊織さんが望まないとどうしようもないし)


難しい……。


ダイエットのための文章を目で追っているのに、頭に浮かぶのは伊織さんのことばかりで。どうやったら彼とコミュニケーションが取れるのかと悩んだ。