「わかった、それ以上は喋るな」
手のひらを向けてきた伊織さんは、不愉快そうに眉を寄せて愛用のスプーンを手に持つ。
そして、パンプディングの隅っこのプリンの部分だけを掬って嫌そうに口に入れた。
ゴクリ、と喉を鳴らして彼の反応を見守る。ドキドキと胸を押さえていると、プディングを飲み込んだ伊織さんの硬さが和らいだ気がした。
「……悪くない」
「やっ……た!」
思わず片手を振り上げてガッツポーズを取ってしまいました。
「うるさい」
伊織さんにはバッサリ斬り捨てられましたけど。ごめんなさいと謝りながらも、なおも頬が緩むのを押さえられない。
自分用には同じパンプディングをメインに、トマトとレタスとキュウリにハムのシンプルなサラダとじゃがいもの冷製スープを用意しておいた。
ダイエットには野菜をメインにしてカロリーを抑えながらも、たんぱく質なんかの基本的な栄養は必要だと本に書いてあった。だから、サラダにはそういったものを+すると良いとか。
昨夜2時まで熟読した上での4時起きだから眠いけど。伊織さんがちゃんと私の作った物を食べてくれた。しかも、私も同じものを食べてる。それだけで心が浮き立って仕方なかった。



