「この食べ物のコンセプトは何だ?」
「は?」
伊織さんは腕組みをしたまま、ジロリと私を睨み付ける。その瞳は厳しい光をたたえていて、いい加減な態度は許さないと言われてるよう。
(って言うか……コンセプトっなに?)
そんな横文字聞いたこともありませんから、意味がわからなくて答えられるはずもなく。焦った私はとんでもないことを口走った。
「すみません! バカすぎてコンセプトの意味がわからないので答えようがありません」
土下座する勢いで伊織さんに頭を下げれば、彼はふうと盛大なため息を着いた。ごめんなさい、アホすぎてごめんなさい。
「テーマや目的と言い換えればわかりやすいか?」
「あ……はい!」
椅子からガタッと立ち上がった私は、コクコクと勢いよく頷くと今回の目的を伊織さんに告げた。
「伊織さんがパンを食べられるようにすることと、焼きたてのお菓子やお料理がどれだけ美味しいか知ってほしいんです。
あと、一緒にご飯を食べて、食事は楽しいものって理解してもらえたら……って」
伊織さんへの説明は私が考えたまんまだけど、それが嘘偽りない気持ちで私の真実だったから。
「わ、私と伊織さんは……来年3月まで家族ですから……す、少しだけでもいい思い出を作りたいんです」



