砂糖と牛乳も混ぜて……バニラエッセンスで香りづけ。後は秘伝のアレを入れて、と。ヒタヒタに浸したものを一晩置いた翌朝。4時に起きてオーブンに火を入れた。
「……なんだこれは?」
猫のミクに棚からお腹にダイブされ、朝から不機嫌な伊織さんがお腹を押さえながら無愛想に言う。
「パンプディングです。せっかくなので、焼きたてを召し上がっていただきたかったんです」
テーブルに載ったココットに入った、熱々焼きたてのパンプディング。材料も味もいつものプリンと同じだけど、違うのはゼラチンが入ってないことと、パンが入って熱々だという点。
パンプディングを選んだ理由は2つ。伊織さんにパンという固形物を食べて欲しいという思いと、焼きたて熱々の食べ物がどれだけ美味しいのかを体験して欲しいこと。
ついでに、ちょっとでも会話をして“食事は楽しいもの”という認識を持って欲しいという思いもあった。
「いつもの普通のプリンと味は変えてありません……騙されたと思って、食べてみてください」
彼の銀のスプーンを差し出したまま、ドキドキと成り行きを見守る。まだまだ彼が食べてくれる確信はない。だから、一応普通のプリンも用意はした。
伊織さんは射殺さんばかりにココットに入ったパンプディングを睨み付けてる。



