まだ、雨が止まない。
雨音を聞きながら、うつらうつらとうたた寝をしていると、バサッと肩に重みが乗った。
「はぇ!?」
慌てて目を擦ると、腕から肩にかけて薄手のブランケットがかけられてた。
「これ……おばあちゃんの」
背中にかけられていたブランケットは、私がおばあちゃんの誕生日にプレゼントしたものだ。
おばあちゃんは色が気に入らない、硬い毛羽立ちが嫌だと文句を言いながらも使ってきたそれを……私に掛けてくれたんだ。
じんと胸が温かくなって、急いで立ち上がる。今いるのは一階の六畳間で、その奥に台所がある。襖を開くと、お味噌の香りとともに湯気が広がった。
「おばあちゃん、ごめんね。朝の支度させちゃって」
「寝ぼけて作ったとんでもないものを食べさせられるよりはましさ。ほら、起きたんならこれくらい運びな! 相変わらず気が利かない子だね」
あまり上品と言えないおばあちゃんの言葉だけど、あちこちでぬくもりを感じる私は変なのかな?
ちょっと可笑しくなりながら、お盆でご飯を運ぶと「気色悪い笑い方をするんじゃないよ」と怒られてしまいました。
「軟弱にはリンゴで充分だ。大の男がいつまで寝て役立たずのつもりかね」
そんな憎まれ口をたたきながらも、擦りりんごとうさぎりんごまでちゃんと用意するんだから。やっぱりおばあちゃんもお人好しだよね。
久しぶりのおばあちゃんのごはんは、温度のあたたかさ以上にぬくもりを分けてもらえた。



