……と、意気込んでビルの正面玄関から入ろうとしたら。
今、なぜか警備員に呼び止められてまして。玄関ロビーどころか受け付けがかなり遠い現状です。
「高校生がこんな場所に何の用かね?」
厳つい顔をした身長が2mはありそうな警備員さんに、腕をがっちり掴まれて尋問を受けてます。
「高校生じゃありません! 私、和泉 碧って言います。夫の伊織さんに書類を届けに来ました」
「お嬢ちゃん、嘘をつくならもっとマシな嘘をつくんだな。社長が結婚したって話は聞いたことがない」
もう一人いた白髪の警備員が呆れたような声を出して、ガタイのいい警備員さんにつまみだせと指示をした。
「あの! 私は本当に伊織さんの……」
「しつこいな。身分証明書もないのに信じられるわけないだろう!」
警備員さんに痛い点を突かれて、グッと言葉を飲み込んだ。
私は免許証やパスポートなんて持ってないし、健康保健証は伊織さんの名前があるけれど今は手元にない。悔しいけれど、童顔で二十歳と信じられないのも無理はない。
警備員に引きずられている間、玄関ロビーを横切る一団があって――その中に伊織さんの姿が見えた。
「伊織さん! 私です、碧です! 書類を届けに来ました」
精一杯手を伸ばして封筒を振るけど、海外の人と会話してるらしい彼は気づかない。何人か知らないけれど、通訳無しで直接会話できるなんて。きっと難しい専門用語も難なく話してる。
真剣な伊織さんの顔を見た瞬間、心臓がトクンと跳ねる。いつも冷たい瞳しか知らないから、あんなに真面目な眼差しをするなんて、初めて知った。



