「愛しのダンナ様に会いに来たんでしょ。ほら、しっかりしなきゃ!」
お店を早めに閉めてまで付き合ってくれた美帆さんは、私の背中を景気よく叩く。
(そ、そうだ。私より小柄な美帆さんがこれだけ堂々としてるなら、私だって)
今は午後6時を過ぎているけれど、1年で一番日が長い時期だからまだまだ太陽が空に輝いてる。まばゆいばかりの青空を写し込む本社ビルからは、仕事を終えたらしい社員が三々五々出てくる。
今なら、日中より人が少なくなってる。薄いピンク色の封筒を胸元で抱き寄せながら、ゴクリと喉を鳴らした。
「い、行ってきますね」
「うん、頑張って。わたしは適当にぶらついてるから」
「はい。ここまでついてきてくださってありがとうございました」
ペコッと頭を下げれば、美帆さんはあははと笑って肩を叩いてきた。
「わたしと碧ちゃんの仲でしょ。それに、わたしだってミーハーで出張っただけだから、気にしないの」
じゃあね、と美帆さんはヒラヒラと手を振りながら、街中に消えていった。
これからは、一人で頑張らなきゃ!
よし、と頷くと、思い切って本社ビルへ足を踏み入れた……。



