(自分から親子の縁を切るなんて、昔によほどのことがあったんだ)
もしかすると伊織さんがプリンしか食べないのも、普通にご飯が食べられないのも。何かのトラウマなのかな?
何十年経っても癒えてないなんて。それはどれくらい深い傷なんだろう?
気がかりではあるけれど、たぶん私がそれを知る機会はないだろうな。所詮1年だけ契約した仲だから、きっと深く知る前にお役ごめんになる。
伊織さんだって、私が心配したところで迷惑だろうし。彼から話してくれる期待なんて、持つだけ無駄だ。
少し落ち込んだ私は、美帆さんに引っ張られリーズナブルなお店で服を揃えた。
おばあちゃんがバイト代の代わりにくれるお小遣いが今日はないから、懐が寂しかったけど。
何とか予算内で納得出来るツーピースを購入出来た。
そのあと、あくあくりすたるに戻って着替えた後。美帆さんに顔と髪をいじられて流しのタクシーに乗り込む。
そうしてやって来たのが、伊織さんが社長を務めるサクラカ興産本社ビルだった。
全面ガラス張りの30階建てのビルは螺旋のように捻れた奇抜なデザイン。その威容を目にしただけで、足がガクガクと震えてきた。



