契約結婚の終わらせかた




「なるほど、それでここに来なきゃいけなかったわけね」


美帆さんは茶髪をさらりとかきあげて流してる。その堂に入った態度は流石ですが……。


正直言って、私は今すぐ逃げたい気持ちで一杯で。とても美帆さんのように落ち着いてはいられませんよ。





美帆さんが私の事情を聞いた後、根掘り葉掘り訊かれまして。いろいろ白状させられました。

で。ダンナ様である和泉 伊織さんの名前を出せば、美帆さんはぎゃ~と奇声を上げた。


「あの! サクラカ興産社長の、ミスターコールドマン? どんな美人モデルや有名な女優が言い寄っても、すげなく振っちゃうって評判の!」

「……コールドマンですか」


芸能界には疎いから全然知らなかったけど、伊織さんは必ずイメージキャラを務める女優さんと噂になったりするそう。けど、大概無表情と無言と無関心を貫き通すから、噂はあっという間に消えてしまうとか。


「あの年で年収うん億円の社長でしょう。その上モデル顔負けのイケメンだし、面倒くさい親戚付き合いもなし。マンションや別荘持ち。なのに独身。そりゃあ結婚狙いの女が群がるのも当然ね」


きゃいきゃいと騒ぐ美帆さんは案外ミーハーだ。私が知らなかった伊織さんの情報をそこまで知ってたなんて。


「親戚付き合いがないって……やっぱり絶縁してるんですか?」


それより気になったことを訊ねれば、そうねえと美帆さんは考え込む。


「噂だと親子の仲が最悪だったって。彼自身が望んで縁を切ったって言われてるよ」