契約結婚の終わらせかた




『それより用件だけど、バッグの中に薄いピンク色の封筒入ってない?』

「は……入ってますけど」


いやいや。何ですか、この封筒は。私は見たことも触った記憶もないんですが? いつの間に仕込んだのですか、葛西さんは。


『それね、大事な資料なんだ。伊織がなくて困ってるから、悪いけど会社まで届けてもらっていい?』

「……は?」


いきなり何を言い出すんだろう、この人は。意味がわかりません。


『今からメールで所在地送るから、頑張って来てね。あ、ついでにちょっとビジネスっぽい格好してきて。一応きみは社長夫人だから、伊織が恥をかかないためにも。じゃ、バハハ~イ』

「………………………」


絶句しながら動けずにいると、テンポのいい曲が短く鳴り響く。メールの開き方も解らずにまごつく私を見かねたか、美帆さんが教えながら操作をしてくれた。


「はい、これで本文が見れるはずだよ……って、うおっ! なに? これ、サクラカグループの本社の所在地じゃん。なんで碧ちゃんがこんな情報手に入れられるの?」


美帆さんが目をまん丸にしてスマホの画面を凝視してる。


(あまり知られたくなかったけど仕方ないよね)


美帆さんとは今後も交友を続けるつもりだし、そろそろ事情を話してもいい頃合いと思ってた。だから、契約という部分や借金という生々しい話はさておいて、だいたいの現状を話そうか、とお茶で喉を潤す。


「美帆さん、今まで黙っててごめんなさい。実は……」