契約結婚の終わらせかた





私は冷蔵庫の前に陣取ると、通せんぼみたいに両手を広げて彼を見据えた。


“絶対妥協はしませんからね!”


伊織さんは絶対口を出すななんて言ってたけど、サプリメントと栄養補助食品と。固形物がプリンだなんて食生活、絶対体にいいはずがない。


そんな味気ない食生活で健康でいられる方が不思議なくらい。これが20代前半ならまだ無理は利くかもしれないけど、伊織さんはもう30代。体にいろんな不具合が出てくる年齢だ。


生活習慣病のリスクだって高まってる。心臓病やなんかの疾患だって。


もともと毎日午前様の上に1ヶ月休みなしなんてざら。海外出張の次の日に地方への出張だってある。そんなむちゃくちゃな毎日で、体に負担がないはずがない。


今は平気でも、将来的には絶対あちこちがボロボロになってる。むちゃくちゃな食生活のせいで心疾患や脳卒中や糖尿病のリスクも高まる。


そういった病気はバカにできない。最悪死に至るんだから。


だから伊織さんの妻でいられる今のうちに、食生活を改善することが一番の目標。


りんごあめを食べることができたなら、もう少し頑張れば野菜入りのプリンを食べられるんじゃないか? そう考えた。


もちろん、これは私の勝手な押し付けって自覚はある。彼が望みもしないのに食べさせようとするのは相当厚かましいって解ってるし。


でも、だからこそ。


いくら怒られようが冷たく突き放されようが、私は伊織さんの体のためにと野菜プリンを作った。