「……いろいろ無意味に思えるが、あんなものなのか」
伊織さんが真剣に考え込む姿が可笑しくて、藤棚のベンチに彼を放置して私はそそくさと露店へ向かう。
そして、まだ腕組みして考える人と化した伊織さんに向けて、買ったものを差し出した。
「はい、どうぞ」
「……何だこれは?」
「見ての通りりんごあめですよ。食べられなかったら知り合いにでもあげてください。こういうのは案外懐かしいものですから」
「…………」
伊織さんは怪訝そうな顔を緩めず、りんごあめをじっと見据えてる。突然のプレゼントだから、受け取ってもらえる自信なんてこれっぽっちもなくて。拒まれたら、空くんにでもあげようかなって思ってたけど。
ドキドキしながら沈黙に耐えた――けど。
伊織さんの指が、躊躇いながらもりんごあめに触れて。パッケージごと手に取ってくれた瞬間、言い様のない嬉しさに包まれた。
「これが……祭りというものか……」
りんごあめを眺めながらボソッと呟いた伊織さんの声は、確かにいつもより柔らかくて。
ほんのちょっぴりと、彼と近づけたような気がした。



