伊織さんは黙ってスプーンを使いプリンを食べ始める。
やっぱり無理か……と肩を落としながら、サンドイッチを摘まんでちびちびとかじる。やっぱり味気ないな……。と沈んだ気持ちでいると、葛西さんが伊織さんに声をかけた。
「どうした?」
なんだろう? と顔を上げて伊織さんを見ると、彼のプリンを食べる動作が止まってる。
あれだけ大好きなプリンを食べるのを止めるなんて? 不思議になって彼の視線をたどれば、その先は藤棚の近くにある露店に行き着いた。
「あれは、なんだ?」
「は?」
思わず、訊き返してた。お祭りならどこにでも見られる、チョコバナナやりんごあめの屋台だけど。
伊織さんの顔が不機嫌さを忘れ、純粋に不思議な物事に対する好奇心が垣間見える。
(まさか……本当に伊織さんは屋台や露店を知らないの?)
家族とは絶縁するほど仲が悪いとは聞いていたけど、どんな子ども時代を過ごせば屋台を知らず育つんだろう?
疑問に思いながらも、これはチャンスだと勇気を出して申し出てみた。
「あの……よかったら、私が案内しましょうか?」



