契約結婚の終わらせかた






「ありがとうございました!」

ペコリ、とお客様に頭を下げお見送りする。

たかがファミレスでも、来店下さる大切なお客様だから。私はいつも元気な挨拶を心がけてる。


今は、深夜12時。よくあるチェーンのファミレスで、私は週に5日夜7時から深夜1時まで働いてる。西欧風の煉瓦の建物がお洒落で、若い女性に人気だけあって深夜でもお客様が絶えない。


(さて、片付けなきゃね)


お客様が使ったテーブルを片付けて、使用された食器類を厨房まで運ぶ。今日はあと一時間で終わりだから、頑張らなきゃ。そう思ってたけど。


「碧ちゃん、悪いけど厨房のヘルプ入って。太田さんが腹痛で来られないって」


事務室から店長が顔を出して申し訳なさそうに頼んできた。


(今日はちょっと疲れてるけど……後の厨房が鈴木くんだけだと回らないよね。困ってるんだし、私も稼がなきゃいけないし)


少しだけ思案した後に、私はわかりました。と頷いて厨房のヘルプに入る。エプロンと帽子を被って、恐縮する鈴木くんと一緒にオーダーをこなす。


あっという間に一時間が経ち、深夜1時を過ぎたころにドアベルが響いて新しい来客を告げた。