契約結婚の終わらせかた




「おばあちゃん……」


何て会話をしたのかわからないけど、私はジンと胸に込み上げてくるものがあり、思わずおばあちゃんに抱きついた。


「なんだい、良い年をした娘が子どもみたいに。あたしを抱き潰す気かい」


その後はいつもの調子のおばあちゃんがいて、笑えるやら泣けるやらで大変で。おばあちゃんに「そんな不器量を人前に晒すんじゃないよ」って憎まれ口を叩かれたけど。何だか安心して笑ってた。


(そうだ……私とおばあちゃんだってもとは他人だったんだ……努力しよう。あの人と一時でも家族になれるように)


彼からすれば余計なお世話かもしれないけれど。私は、そう決意を固めた。


……んだけど。


伊織さんが次に来た時に、既に心が折れそうになった。


だって……


契約結婚の条件として提示されたのが、予想外のものだったから。


1·お互いにプライベートやプライバシーに干渉しない。

2·恋愛沙汰は自由。

3·夫婦としての義務は一切果たさない。(社交は除く)

4·家事や家のことは一切手出ししないこと。ハウスキーパーは日常的に派遣されているが、更に必要な場合は契約会社へ依頼をすること。

5·家でも外でも必要以外は話しかけないこと。

6·週に一度はプリンを作ること。

7·困ったことがあれば、まず秘書の葛西へ連絡し指示を仰ぐこと。自己判断での処理は禁止。

8·生活費は月に50万。好きに使ってもいいが、こちらのものを勝手に購入は禁止。


Etc.……


見事なまでに徹底的に、接触を拒まれてる。これじゃあ……居候より気まずい他人じゃないでしょうか?


何のために一緒に住むのかがわからない。