そして、伊織さんが帰った後に閉店した駄菓子屋の奥にある和室で。おばあちゃんに呼ばれて改めて訊ねられた。
「碧、本当にあのひとに着いていくのかい?」
おばあちゃんは口が悪いし言葉は多いけど、肝心な時はいつも言葉少なになる。そして、私が大切な選択をする際には、ごちゃごちゃ言わずに黙って見守る。
今も、たぶんそうだ。憎まれ口など一切叩かずに、ただジッと私を見詰めてくる。私が答えを出すまで、決して口を挟まない。
それは、きっと。おばあちゃんも悟っているから――私とおばあちゃんが本当の家族でない、と。
私は、畳の上で正座をしたまま膝の上で握りしめた拳に力を込める。おばあちゃんに嘘をつかなきゃいけない後ろめたさや罪悪感はあるけれど、おはる屋を助ける唯一の方法なんだ、と自分に言い聞かせて、ゆっくりとうなずいた。
手汗をかいて震えそうな指にますます力を込めて、両手を握りしめる。まっすぐに見合ったまま、静寂だけが部屋を満たす。
ふう、とおばあちゃんが小さく息を吐いて、わずかにだけど厳しい顔を和らげた。
「……いつかあんたがここから嫁に行くのは覚悟してたけど、思ったより早かったね」
そして、こうも付け加える。
「だけど、碧。あんたは何があろうとあたしの孫娘だから。辛いことがあれば、いつだって帰ってきてもいいんだよ。あのバカ息子にはよく言い聞かせといたがね」



