そして、その日伊織さんは迎えに来た車に乗って帰った。
翌日、伊織さんは改めておばあちゃんに挨拶をしに来た。
“碧さんと結婚させてください”――と。
事前に打ち合わせておいた内容だと、私と伊織さんは1年前に出会い、半年前には付き合い始めたという設定にしておいた。
たぶん、その嘘はおばあちゃんに見破られると思う。だって、私が誰かと出掛けることすら滅多にないって、おばあちゃん自身がよく知ってるから。
私だって、正直に言えば胡散臭いと感じた。だから、おばあちゃんは許してくれるはずがない。それならそれで話は断ろうと考えていたんだけど。
なぜか私は話の途中で部屋を追い出され、おばあちゃんは伊織さんと2人で話すことを選んだ。いくら伊織さんが口が巧くても、おばあちゃんから許可を得るには相当難問だと思ったのに。
――私が店番をしながらそわそわ待って二時間後。扉が開いて悟った。
どんな手段を使ったかわからないけど、伊織さんがおばあちゃんの許可をもぎ取ったことを。



