契約結婚の終わらせかた








「碧、俺は不器用で何度も悲しませてしまった……クリスマスの時も。
本当はあの日誕生日だったおまえにこれを贈りたかったが、高速で事故に巻き込まれ行けなかったのは本当にすまなかった。あの時きちんと連絡すればあのような目に遭わせなかったのにな。
それであの後おまえが別居という選択をしたなら、受け入れて距離を置けば気持ちが変わるかと思っていたし、あずさと過ごしてみようとしてみたが、駄目だった。
やはり俺が生涯ともに生きたいと思ったのはおまえだけだった」


私の左手を持ち上げた伊織さんは、薬指に口づける。


「俺はおまえを愛してる……ここにこの指輪を受け入れて欲しい。碧、おまえは?」


じわり、と熱い滴で視界が歪む。


きっと、もらえないと思っていた言葉。


きっと、叶わないと思っていた言葉。


だから、私は。


勇気を振り絞ってあなたに伝えたい。


契約結婚を終わらせて、新しい関係を築くために――




「はい、伊織さん。私もあなたが好きです! 大好きです。ずっとずっと……今までも、これからも」

「……ありがとう、碧」


伊織さんの手で填められた指輪が薬指に輝く。


悲しい契約が終わりを告げた代わりに、永遠を約束する契約として。





そして、遠くない未来。


この家できっと新しい家族が加わり、賑やかな笑い声に満たされるだろう。


おはる屋のみんなとともに。


みんなで作る幸せ。それが、永遠に繋がれる新しい契約――。




【終わり】