到着したのは、見慣れたおはる屋。
だけど、違うところと言えば。
今までお隣さんを隠していた囲いが無くなり、赤い屋根の一軒家が現れていたこと。
白い壁に赤い屋根の三階建ての一階は大きなガラス張りのホールになっていて、とても日当たりがいい。周りにはたくさんの緑と花が植わった庭があり、すごく素敵。
「これは? ……え、伊織さん!?」
私が観察していると、伊織さんはドアを開いて勝手に入っていく。ぎょっとした私は彼を止めようと、掴まれた手に力を込める。
「伊織さん! 勝手に入っちゃダメですよ」
「構わない……ぐ」
ドスッ、と鈍い音が響いて伊織さんの背中に飛び乗った黒いものは……
ますます体が立派になった黒猫のミクだった。
「にゃあ」
「ミク! 久しぶり……あ」
久しぶりだからミクを撫でれば、珍しく上機嫌でゴロゴロと喉を鳴らす。
そして、気付いた。
今いるところはダイニングルームで、そこはかつて住んでいたマンションそっくりの造りだということを。
そして……
ダイニングテーブルの上には金魚鉢があり、太郎と花子が悠然と泳いでた。
「伊織さん……ここって」
「俺たちの、俺たち家族の新しい家だ」
「……え?」
伊織さんが言った意味が直ぐに理解できなくて、目をパチパチ瞬いていると。
「今までの契約は全て、この場で終わらせる」
そう言った伊織さんはポケットからひとつの白い箱を取り出す。
そして――
彼は私に、こう言ってくれた。
「そして、新しい永遠の契約を結ぼう――碧。俺と……本物の家族に、夫婦になって欲しい」
そして彼が開いた箱には、ダイヤモンドのデザインリングが輝いてた。



