契約結婚の終わらせかた




『そこで、われわれは駄菓子屋をモデルケースとして、地域の子ども達が気軽に立ち寄れるお店作りを始めました。
まだまだ手探りの段階ですが、地域の皆さまの協力も得て手応えを感じています。
“どんな子どもでも歓迎する”――安心して子どもを預けられる場所があるなら、お母様方も負担が減り余裕が生まれるのではないでしょうか?
私と母のような悲しみが繰り返されることがないように、全力で支援に取り組んで行きたいと思います』


パッパッと伊織さんが示した写真を見て、あっ! と声を上げそうになった。


そのうちのひとつの写真に、伊織さんとあずささんが選んでいた家具屋の家具が写ってたから。


ソファの上で楽しそうに横たわり、またふざけあいながらピースサインで映る子どもたちは、おはる屋の子どもたちと同じ何の屈託もない明るい笑顔だった。


――あずささんと伊織さんが家具屋にいたのはそのお店作りのためだったんだ。もしかすると別居前に忙しかったのもそのせいで。


ほうっと息を吐くと、なぜか視線を感じて慌てて顔を上げると――伊織さんがまっすぐこちらを見てる?


え? と訳が解らなくて目を瞬いていると、伊織さんは静かに語りだす。


『私は、去年の春までまともに何も食べられませんでした。唯一食べられたのが、思い出の味のプリンでした』