赤いドレスを着たあずささんは、モデルと言われても違和感がないくらい妖艶な美しさがあった。
だけど、私だって頑張ってきた。彼女に比べれば付け焼き刃だけど、一年前よりはマシになってるはず。
「すみません、通してください!」
私が人混みにもみくちゃにされている時、壇上では何らかの発表が始まった。
『それでは、弊社社長の和泉 伊織より、皆さまに向けて大切な発表がございます。ご静聴願います』
司会者の紹介があった後、チラッと見えた伊織さんは渡されたマイクを右手に持つ。そして、静かに語りだした。
『――幼いころ、わたくしは死にかけた経験がございます』
突然の伊織さんの衝撃的な発言に、周囲にどよめきが起きた。どういうことか記者から質問が飛ぶけど、伊織さんは淡々と事実のみを述べる。
『犯人は母が信頼していた家政婦です。わたくしは彼女に毒を盛られ、その結果的心身ともにぼろぼろになりました。
数年に渡り口にするものすべてに毒が混入されたため、わたくしは食事すらまともに取れない生活をしていたのです』
伊織さんのカミングアウトに、呆気に取られたのは私だけじゃない。周りの人なんて余計ショックだったんじゃないだろうかと思う。
『……母は、私を守るために家族と離して育ててくれましたが、皮肉なことにそれが私を害するという結果になりました。
私は長年母を恨んできましたが……つい最近、知りました。母がどれだけ孤独で追い詰められ、やむなくこの方法を取ったのかと』



