契約結婚の終わらせかた




葵和子さんと別れた私は伊織さんを捜すけど、そんな必要はすぐになくなった。


会場に設えられた壇上に、伊織さんが上がったから。


(伊織さん……)


2ヶ月ぶりに見るダークスーツに身を包んだ最愛の人は、以前よりも精悍に見えた。


前から鋭さはあったけど、今は獰猛な肉食獣のような。どん欲な光を瞳に湛えてる。


あの……青みがかった瞳に見詰められるたび、どれだけ幸せだっただろう。


(伊織さん……!)


隣にあずささんがいてもいい。


堪えきれない衝動に突き動かされ、壇上の前にできた人の群れをかき分けて彼に近づこうとした。


(伊織さん……!)


あなたに、ずっと言っていなかったことがある。


ずっと言いたかったけど……


契約だから、どうせかないっこないって諦めて。


だけど……


だけど。


やっぱり、あなたに伝えたい。


私のただひとつの真実を――。