「大丈夫、この1ヶ月であなたはとてもお綺麗になったわ。自信を持って」
葵和子さんにそう励まされ、私は震えを飲み込みながら頷いた。
市内で一番のホテルは以前にも来たことがあるけれど、あの時はとにかく夢中だった。伊織さんを追いかけるために必死で。
もう、あれから半年経ったんだなってしみじみと思う。
今日の私は葵和子さんに貸して頂いたウグイス色の紬に銀色の帯を合わせた和装。髪も葵和子さんに結い上げてもらい、彼女の簪を挿した。
「女優になりきるの。そう思えば平気になれるわ」
「は、はい」
ドキドキと高鳴る胸を押さえながら、深呼吸をして高ぶりを沈める。葵和子さんに連れられて翡翠の間に入ると、一瞬で真夏が来たようなあふれる緑に圧倒された。
パーティーの招待客は数百人だろうか。よく見るとどこか見覚えのある経済人や有名人も混じってる。
これだけ大掛かりなら、やっぱり伊織さんとあずささんの婚約発表かと思えるけれど。私は、負けまいと拳を握りしめる。
「おかしいわね……中村家の方があずささん以外いらしてないわ」
葵和子さんがそんなことをおっしゃるから、そうなんですか? と首を捻る。
「ええ。中村家とは懇意にして頂いてますからわかりますの。あずささんのご両親すら来てないわ」
どういうことだろう? 普通、婚約や結婚なんて一大事なら、名家ほど親が出てくるものだよね。疑問を抱きつつ進むと、意外な人が葵和子さんの前に出た。



