「そんなの、おかしいよ!」
悲鳴にも似た心愛ちゃんの叫びが、私の耳を打つ。
「あたしだって、勇気を振り絞って堅に言えたんだよ! 碧お姉ちゃんだって頑張れって言ってくれたじゃん。
なのに、どうして大人の碧お姉ちゃんが、ちゃんと言わずに逃げようとするの!?
それって、ズルくない!」
「……心愛ちゃん」
「ちゃんと、言いなよ! 伊織さんが可哀想じゃん。空兄ィだって……」
ぼろぼろと涙を流す心愛ちゃんの頭を、ポンと叩く手があって。その持ち主は私にこう告げた。
「オレも……はっきり決着をつけてきて欲しいと思う」
部活の帰りか、高校の制服を着た空くんが私を見据えてきた。
「碧姉ちゃん、オレはまだ未練があるんだ。あんたがちゃんと振られるなり、結ばれるなりしないとオレも納得できない。 ちゃんとしろよ! でなきゃ諦めきれねえよ」
「空くん……」
「行けよ! 行ってあのおっさんにぶつかって来い。いつまでもうやむやにするな。ちゃんと決着をつけろ」
空くんが私の背中を押して無理矢理和室に押し込める。すると、そこでは葵和子さんが待ち構えてた。
「さ、碧さん。時間がありませんから早く支度をしましょう」
にっこり笑う葵和子さんに、私は頷いた。
「はい。お願いします」
……子ども達に後押しされたのは情けないけど、確かに私もそうだと感じてた。
たとえあずささんと伊織さんとの結婚が決まったとしても、ちゃんと自分の言葉で伝えてきっぱり振られよう。
そうしたら、一時的に落ちるだろうけど。いつかは前に進めるようになるだろう。



