契約結婚の終わらせかた





「碧お姉ちゃんは、それでいいの?」


心愛ちゃんが意外なことを言い出した。


「え?」


なんのことだろう? と目を瞬くと、心愛ちゃんが私の手を掴む。


「パーティー、今日なんでしょ? どうして伊織さんに会いにいかないの?」

「……心愛ちゃん」


それはね、と私は彼女に微笑んで見せる。


「伊織さんの幸せを考えたら……大好きな人の幸せを願うなら、私が邪魔だって結論になるから。そういう時もあるんだよ」

「なんで? 碧お姉ちゃんは伊織さんが好きなんでしょう? 伊織さんだって碧お姉ちゃんのこと」


ふるふると首を横に振る。


「それは、ないわ。伊織さんは本当に大切な人を見つけたんだから」


言葉にしてしまうと胸が痛いけど、これが一番なんだと言い聞かせる。


本当は……もっと、ずっと一緒にいたかった。


メッセージカードを送り続けたのは未練たらしいけど。今日を最後にもう二度と送らない。


“さようなら。お幸せに”


それだけを記した最後のメッセージカード。あとはバラのイラストだけを添えた。


――バラの花言葉は……。


言えない想いをイラストに託すのも最後。たくさんの想いを込めて、何枚も描いた中でこれはと思うものを選んだ。


メッセージカードを葵和子さんから渡してもらったら、二度と伊織さんと関わらない。私はそう固く決意をしていた。