3月14日日曜日。
その日は朝から快晴で、春の予感に満ちあふれてた。
「ねえ、ねえ。碧お姉ちゃん、聞いてよ! 堅のバカがさ……」
その日は朝からおはる屋の店番に入ってると、心愛ちゃんはひとつの報告をしてくれた。
心愛ちゃんの右手薬指には、銀色に輝く指輪。初めて見るそれに見入ってると、心愛ちゃんは頬を染めながら教えてくれる。
「堅のバカがさ……堅のくせに……貯めた小遣いはたいて、これ買ってくれたんだ。“オレは心がわりしねえ”って……で。中学で先に待ってるって言ってくれたの」
ふわりと花がほころぶように、心愛ちゃんは笑んだ。
「どうしよう……碧お姉ちゃん。あたし、堅が好きでたまんない。これが幸せってのかな?」
「うん、そうだね」
私は心愛ちゃんをキュッと抱きしめながら、彼女の背中を叩く。
「世界で一番大好きなひとのそばにいられるって、本当は誰にでも出来ることじゃないんだ。それは奇跡なんだよ。だから……大切にしなきゃね」
いくら、願っても私は叶わなかった。それでも……想うことは自由だから。私はせめて、と若い人たちの幸せを願う。
伊織さんが去年の秋にくれた手紙……。
私にとっては、あれだけで十分だった。
これから離婚が成立してあずささんと結婚しても、心だけは自由にあなたを想ってていいよね?
伊織さん――。



