契約結婚の終わらせかた




「正治(しょうじ)さん?」


聞き覚えのある声が社長さんを呼んだ。


あれ? と見れば、風呂敷包みを持った葵和子さんが立ってる。 どうやらおばあちゃんに用事があって来たら、偶然社長さんに会ったみたいだ。


「葵和子さん、お知り合いなんですか?」

「え、ええ。正蔵さんの長男である正志(まさし)さんの息子で、今は桂興産の社長をされてますけど……どうしてこちらに?」

「あんたですか……ひっ」


正治さんと呼ばれた桂興産の社長さんは、葵和子さんを見た瞬間嫌悪感も露にしたけど。葛西さんのにこやかな笑顔に顔をひきつらせた。


「そういえば、あなた昔うちの社長の伊織いじめたんだっけ~?」

「ひっ……」

「知ってる? 桂家から追い出された伊織、あんたらのお陰様で死にかけたんだけど。 同じ目に遭いたい? あ、あんたじゃなく、息子を同じような目に遭わせるってのもアリかな~」


出た……すごく親しみやすい最高の笑顔だけど、体の芯から凍らされそうな葛西さんの悪魔の笑みが。


完全に真っ青になった社長さんは、ガタガタと震えて突然土下座をした。


「ゆ、許してください! あれはほんの出来心……わ、私が愚かでした!」


桂家社長の突然の謝罪に、葵和子さんは唖然としてるけど。葛西さんはそれだけで許すつもりはないようだった。


「あんたらのせいで今後葵和子さんと伊織に何かあったら……わかってるよね?」

「は、はい! わたくしめが皆にしっかり言い聞かせます。それで勘弁ください!!」


プライドが高い桂家の人をあれだけ従順にさせることが出来るなんて……。

恐ろしい……と私は心底葛西さんが怖くなりましたよ。