「うん……」
心愛ちゃんはごしごしと涙を拭うと、私を見上げて強い決意をみせてきた。
「あたし、ちゃんと堅に言う。そりゃ怖いけど、何も言えず堅に彼女ができてから後悔しても遅いもんね」
そして、心愛ちゃんは私に鋭い瞳を向けてきた。
「碧お姉ちゃんは?」
「え」
「碧お姉ちゃんは、伊織さんに言わないの?」
「……それは」
まさか心愛ちゃんにまで気持ちがばれているとは思わず動揺していると、彼女はクスリと笑う。
「大丈夫、たぶん本人は気づいてないよ。ってゆ~かさ、碧お姉ちゃんって大概鈍いよね。空兄ィがあれだけ好き好きアピールしてても、見事にスルーをし続けるんだから」
「…………」
事実なだけに……何も言えませんです、ハイ。まったく気付いてませんでした。
「ま、それは置いといて」
「はあ」
「碧お姉ちゃんはどうするの、チョコ。あの単純バカどもは粒チョコ一個で十分だけど、伊織さんには考えたら?」
「……そう、だね」
うん、と自分で気持ちを確かめてから頷いた。
「伊織さんに……チョコをあげたいな」
本音の一部が、イベントに託つけて漏れる。
“伊織さんに逢いたい”――と。
別れようと別居までしていながら、なんてバカなんだろう。
だけど……
いいよね。
私からとわからないように、そっと置いてくれば。
幸い荷物用にまだマンションの鍵は持ってる。それを使って中に入れば……。
ついでに、夫の欄が記入済みであろう離婚届も持ってくればいい。
覚悟は、決まった。



