契約結婚の終わらせかた




私が淹れたお茶を置くと、葵和子さんは「ありがとう」と喉を潤す。


「それで、なんだね? 碧の不味い茶だけを飲みにきたんじゃないだろ」

「お、おばあちゃん!」


まだお茶を淹れるのは不得手なのに。おばあちゃんは本当にズケズケと物を言う。恥ずかしくて葵和子さんの顔が見られなかった。


「大丈夫、普通にいただけますわ。お茶はコツさえ掴めば、もっと美味しく淹れられるようになります」


葵和子さんが優しい言葉で慰めてくれるから、ぱっと気分が浮上する単純な私。


「やめとくれ。この子はおだてても木には登れないさ」


おばあちゃんが顔をしかめて、「それで?」と先を促した。


「話したいことがあるんだろう」

「はい」


湯飲みを置いた葵和子さんは、私へ向いて微笑んだ。


「……伊織と、初めて電話で話せました」

「本当ですか!?」


興奮のあまりちゃぶ台から身を乗り出すと、おばあちゃんに手のひらを叩かれた。


「これっ! みっともない。結婚した娘がそんな落ち着きないことをするんじゃないよ」

「はぁい」


やっぱりおばあちゃんにはいつまで経っても頭が上がらないな。と思いつつ、葵和子さんに確かめた。


「本当ですか?」

「はい。先日伊織から七通目の手紙が来まして。その中にプライベート用の電話番号があったんです。
何日か悩みましたが、思い切って電話をしてみて……よかった。ごく短時間しか話をしませんでしたが、伊織がかなり歩み寄る姿勢を示してくださいまして。まだ時間はかかるでしょうが、いつかは会いたいと言ってくれました」