契約結婚の終わらせかた





“70年の歴史を持つ駄菓子屋ピンチ”

そんな見出しが踊ったのは、翌朝の新聞だった。


地元紙の地方欄の隅っこにだけど、写真入りでおはる屋の署名運動について記事になってる。間違いなく雅司さんの仕業だった。


「やった! これおれだな」


日曜日のおはる屋は朝から新聞に載った! と大騒ぎ。

「スゲー!写真載ったんだ」「かっけ~」と他の男の子達に羨望の眼差しで見られた堅くんは、鼻高々。


「ばっかじゃない! これくらいで騒ぐって。ホント男ってお子ちゃまよね、碧お姉ちゃん」

「は……はは」


心愛ちゃんが堅くんを氷点下の目で見てたら、彼が凍りついてた。




「あのう……」


わいわいと騒ぐ中で、一人のお客さまが恐々と言った様子でお店に訪れてきた。


「あ、はい」


応対のために慌てて店頭に出れば、お客さまは例の朝刊を手に私に訊いてきた。


「この記事にある“おはる屋”というのは、このお店で間違いないですか?」

「あ、はい。そうです!」

「それはよかった。いや、近ごろこういった駄菓子屋はほとんどないでしょう? 記事を見てたら懐かしくて、つい足を伸ばしてきたんですよ」


サラリーマンらしいスーツの男性は、出張で近くに来たからついでに寄ってくれたみたいで。宿泊したホテルで買ったという新聞を大事そうに抱えてた。


「子どもの頃にあった駄菓子屋そのもの……なんだかわくわくします」


そう懐かしそうに目を細めながら、あれもこれもと購入してくださって。


朝刊の記事をきっかけに、久しぶりという人や存在を初めて知ったという人たちがおはる屋に足を運ぶようになった。