おはる屋の土地が売却される。
おはる屋がなくなってしまう。
あずささんのライバル宣言とともに、二重のショックで呆然としてると。バタバタと駆け込んできたのが堅くん。
「碧姉ちゃん! さっきのおばちゃんから聞いたけど、おはる屋が無くなるってマジか!?」
「……わからない。私にはわからないよ」
両手で顔を覆って顔を見られないようにした。今、目を開ければ泣いてしまいそうだ。
「ばあちゃんに訊いてみる!」
堅くんはスニーカーを乱暴に脱ぎ捨てると、ドタドタと和室を駆け抜けて襖を開く。
「ばあちゃん! おはる屋がなくなるって……!?」
堅くんが一瞬、息を飲んだ音が聞こえた。そして、彼は戻ってくると私の肩を揺さぶった。
「碧姉ちゃん、大変だ! ばあちゃんが倒れてる!!」
「えっ!?」
堅くんの言葉にすぐ立ち上がり、和室を通って台所に駆け込んだ。
「おばあちゃん!」
おばあちゃんは台所の板敷きの部分で、仰向けに倒れてた。顔は青白く、呼吸が浅い。いくら呼びかけても返事がない。
「おばあちゃん、おばあちゃん! しっかりして。返事をしてよぉ……」
いやだ。
おばあちゃんまで、私を独りぼっちにするの?
おばあちゃんがいなくなったら、私はどうすればいいの!?
動揺して呼び続けるしかない私に、堅くんが「救急車呼んでくる!」と店先にある電話に走った。
どうしよう。どうしたらいいの?
おばあちゃんがどんどん冷えてく。呼吸が浅くて早い……顔色も悪いよ。
助けて……
誰か、おばあちゃんを助けて!
ぐちゃぐちゃな頭で必死に祈る中――
思い浮かぶのはただ一人。
伊織さんだった。



