「どうやら、あなたのおばあちゃんは同意したらしいわ」
「え……」
コトリ、と湯飲みが落ちる音で我に返る。慌てて布巾でちゃぶ台を拭いてると、あずささんは「大丈夫?」と訊いてきた。
「すいません、ドジで……いやですね、アハハ」
「動揺するのも無理はないけど……追い打ちを掛けるようで悪いけど、これからが私の本題」
あずささんはコトリと湯飲みを置き、まっすぐに私を見詰めた。
「どうして、勝手に勝負を降りたりしたの?」
「………」
あずささんの言葉に主語はないけど、伊織さんのことだというのは直ぐに解った。
「葛西から聞いたけど、数日前から別居してるんですって?
“伊織が腑抜けてるから何とかしてくれ”ってあの腹黒に泣きつかれたわよ。どういうこと?」
静かに問い詰めてくるあずささん。騒がないからこそ、彼女の怒りの深さが窺い知れる。
彼女には伊織さんのことでお世話になってる。隠し通すのも無理だと判断するしかなかった。
「……離婚……したいからです」
思い切って出した言葉は、ボソッと不明瞭なものだった。
「伊織さんの将来や彼の幸せを考えたら、私は障害にしかなりません。だから、伊織さんと話し合おうとしましたけど、剣もほろろでお話にすらなりません」



