私は、無礼を承知で次々と疑問を正蔵さんにぶつけた。
「伊織さんは、幸せになれまか?」
「約束する! わしがすべて支援し誰にも邪魔はさせない」
「伊織さんと、話せますか?」
「無論だ」
「なら……私にでなく、伊織さんに謝ってください」
「なに?」
正蔵さんも訝しく感じたか、顔を上げて私を見る。だから私は真剣な眼差しを向ける。
「謝る相手は私ではなく、むしろ伊織さんにではありませんか? 彼が深いトラウマで大人になっても何も食べられないほど追い詰められた……死にかけた。そこにあなたの責任はないと言えますか?」
本当は、膝が笑うほど震えてた。でも、今ここでぶつけないと永遠にチャンスがなくなる。どんな罰を受けようと、伊織さんと葵和子さんの苦しみを少しでも解って欲しくて、必死に訴えた。
「伊織さんはずっと独りぼっちで守らなかったとお母様を恨んでいます。お母様だとて息子を守れなかったと気の毒なほど、ご自分を責めてらっしゃる。
どうして、父として……夫として。伊織さんと葵和子さんを守ってくださらなかったのですか! 」
ここまで言うつもりは無かったのに……
気がついたら口が滑って、感情が勢いよく溢れる。
そして……
ふう、と正蔵さんは息を吐いた。
「……たしかに、ワシは2人を守らなかった。だが、それは違う」
「何が、違うのですか!」
「言えるか! 33も上の男が、15の娘に一目惚れした……初恋をした等と!!」
「……え」
思いもよらない正蔵さんの告白に、耳を疑う。
けれど……青白かった正蔵さんの頬には確かに赤みがさしていて。表情も先ほどよりずいぶんと違って見えた。



