おはる屋に入って驚いた。ゴホゴホと酷い咳が聞こえてくる。慌てて框を上がり、和室の引き戸を開けて。おばあちゃんが台所で激しく咳き込む姿を見つけた。
「おばあちゃん!」
急いで和室を通り抜け、台所に駆け込みおばあちゃんの背中をさする。
「おばあちゃん、大丈夫?」
「なに、勝手に上がってんだ……ごほっ! バカ婿と話をつけたのかい?」
「まだだけど……それより、おばあちゃんのことでしょう! 布団を敷くから早く横になって」
「大げさに騒ぎ立てるんじゃないよ! ゲホゲホ!」
「ほら、強がってないで。体にも力が入ってないでしょう」
私はおばあちゃんの腕を肩に回すと、何とか和室を目指す。
その最中、気づいたことがあった。
(おばあちゃん……こんなに軽い。体も……こんなに細く小さかったんだ)
おばあちゃんがこんなにも痩せていた現実に、涙が出そうになる。
幼い頃からずっとおばあちゃんは私の親代わりで、何があったとしても絶対に揺るがない。ずっと変わらずに、憎まれ口を叩いてると思ってたのに。
考えてみれば、おばあちゃんももう65歳。還暦はとうに過ぎてたんだ。
(おばあちゃんだって……いつまでも元気じゃない。そうなったら私がついてないと)
伊織さんと結婚していてはおばあちゃんの面倒まで見きれない。やっぱり私はおはる屋に戻ろう。それが一番なんだ。
そんな現実が胸にしみてきて、どうしようもなく寂しく悲しくなってきた。
おはる屋から外に出ると、伊織さんが子ども達と遊んでる。こんな無邪気な笑顔もできるんだな……って嬉しかった。



