「おじちゃん、久しぶり! ねえ、独楽やろうよ」
「あ、ああ……」
伊織さんは堅くんに捕まり、遊びをねだられて困惑してる。これもいい経験だ、とニヤリと笑って私は放置した。
おはる屋はおばあちゃんがゲーム機の持ち込みを禁止してるから、子どもたちは昔ながらの遊びを自然に憶えてく。だから、伊織さんが童心に返って楽しめればいいな。
ふと視線を巡らすと、空くんとバッチリ目が合ってしまって。思わず視線を逸らしてしまった。
(わ……バカ! なんでこんな態度を取るの。避けてるってバレバレじゃない)
だけど、空くんも遠慮するつもりはないようで。うつむく私の視界に彼のスニーカーが入ってきた。
「碧姉ちゃん……オレ、諦めるつもりはない。だけど、そうやって避けられるのはやっぱ傷つく」
「ご……ごめんなさい」
「いいよ。フライングしたのはオレだし……ね、今度どっか行く? 体がよくなったらさ」
「……ごめんね、空くん」
私は顔を上げると、彼を見据えて首を横に振る。
「私は、伊織さんと別れるけど。空くんと2人では出掛けられない……それは自分が自分を許せなくなるから」
ごめんなさい、ともう一度空くんに頭を下げた私は。そのままおはる屋に入った。
胸を押さえると……まだ、ドキドキしてる。
(ごめんね……空くん。こんな私でも好きになってくれてありがとう)



