契約結婚の終わらせかた





だけど。


「いてっ!」


ポコン、と正男の頭に羽根つきの玉が当たる。


「あ~ら、ごめんなさい! ツンツンに立った毛が枯れた草にしか見えなくて」


心愛ちゃんがわざとらしくそんな風に笑う。


「んだと、このガキ……だっ!」


次に正男のすねに直撃したのは、かなり大きな独楽(こま)。

「あ、わりぃ。手が滑っちまった」

と堅くんが紐を手にアハハと笑う。


「てめ、クソが……んが!」


ポコン、と軽い音をさせて正男の鼻に命中したのが、けん玉。

うわぁ……痛そう。


「こりゃ、失敬。おはる屋を食い物にしようとする野犬かと思ったんで」
と空くんがとぼけたように口笛を吹く。


「て、てめぇら……!」


赤い顔をしてブルブルと顔を震わせた正男は、今にも爆発寸前に見えた。これはまずいんじゃあ? とおろおろしてると。伊織さんが一歩前へ出て正男に言い放つ。


「こんなところで油を売っているより、教授の機嫌を取りにいかなくていいのか?」

「……!」


伊織さんがそう言った途端、正男の顔がさあっと青ざめた。

「就職を自力で出来るなどよほど自信があるようだな。その割には単位を5つも落とすなど。正蔵もフォローしきれないんじゃないか?」

「くっ……お、憶えてろ!」


正男は黒いスーツ姿の男とともに黒塗りの車に乗り込むと、猛スピードで走り去った。